境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害とは
気持ちや行動、対人関係が不安定になりやすく、日常生活や仕事で著しい苦痛や支障を引き起こしてしまう障害です。
基本的には、相手の気持ちを敏感に察することができるため、相手のために(時として必要以上に)頑張ったり、思いやりのある行動をとったりすることが多い方々です。
ただ、相手が自分を見捨てて離れていく、自分を大事にしてくれていない、と感じると、不安や怒りが急に強くなり、うまくコントロールできなくなってしまいます。
冷静になると、なぜあんなことをしてしまったのか…と自分を責めてしまい、とても辛い気持ちになり、さまざまな影響が出ます。
アメリカの調査では有病率は一般人口の約2%で、その約7割が女性であり、わが国でも同程度と考えられています。
うつ病や不安症、PTSD、摂食障害などが併存する場合もあります。
症状
- ①対人関係
- ②自己像
- ③衝動のコントロール
- ④感情
- ⑤認知
上記5つの領域で不安定になりやすいという特徴があります。
①対人関係
見捨てられ不安
人から見捨てられること(実際のものも、想像上のものも、どちらも)に敏感なため、そうなりそうな状況をなりふりかまわず避けようとします。
相手の感情に敏感で、相手と離れることに強い不安や恐怖、怒りを覚えます。
これは、一人でいること、孤独になることへの耐え難さとも言えます。
不安定な対人関係
ほんの1~2回会っただけの相手を極端に理想化し、自分と長い時間一緒に過ごすよう求め、非常に個人的なことを打ち明けようとします。
ただ、自分のニーズを相手が満たしてくれないとわかると、一転してその相手を極端に悪く捉えて怒ったり、けなしたりする、というふうに、同じ人への見かたが突然かつ極端に変化します。
②自己像
自分に対する評価や感覚のふり幅が極端になりがちです。
自分の目標や趣味、意見、職業、友人やパートナーのタイプが突然変化することがあります。
自分が悪い、と感じている傾向が根強く、周りの人からの心理的な支えが得られていないと感じると、こうした感覚が表面化して、自分を非常に否定的に捉えて自己嫌悪が強くなったり、「自分がない」と感じたりします。
③衝動コントロール
過剰な買い物や浪費、万引き、過食、ギャンブル、危険な運転などの衝動的な行動をとることがあります。
また、アルコールなどの薬物、安全ではない性行為などへの嗜癖も見られます。
リストカットなどの自傷行為、自殺のそぶりや脅しをくり返す傾向も見られます。
これらは、重要な相手から見捨てられた、拒絶された、と感じることがきっかけとなりやすいです。
自傷行為や自殺のそぶりが、周りからの関心や助けを得ようとしてアピールしている、と誤解されてしまうこともあります。
④感情
周りの人が自分を理解してくれない、冷たくなった、などのきっかけで怒りが強くなり、コントロールが難しくなってしまいます。
これらは、相手を傷つけるような激しい態度と言葉になって表れます。
怒りの表出は、その後の恥ずかしさや相手に申し訳ない、という感情につながり、自分が悪いからだ、という感覚が強まります。
また、自分が空っぽな感じ、自分に何かが欠けているという感じ(空虚感)を長く抱えている人もいます。
⑤認知
激しいストレスを感じている時、現実的ではない考えが出てきたり、現実感がなくなったりすることがあります。
見捨てられることへの不安に関連して一時的に起きることが多いです。
治療法
症状によってはお薬による治療も行いますが、主な治療は心理療法です。
主な治療法に弁証法的行動療法、メンタライゼーション、スキーマ療法があります。
弁証法的行動療法
境界性パーソナリティ障害の治療に最も効果のある治療法で、唯一、自殺行動の減少に効果があることがわかっています。
怒りのコントロールにも効果があると言われています。
感情調節や苦悩への耐性、対人関係スキルの向上に取り組みます。
メンタライゼーション
自分と自分の周りの人たちの感情、思考、欲求を理解し、感情と欲求がどのように自分と他人の行為に影響を与えるかを理解し、それらから距離を置くためのトレーニングです。
グループセラピーと個人療法の両方を、約2年間受けることでメンタライゼーション技能を発達させていきます。
スキーマ療法
数種類の治療法を統合したものです。
境界性パーソナリティ障害を持つ人が経験する問題を、子ども時代に発達し、生涯を通して進化し続けるスキーマ(自分自身や他人に関係するパターンとテーマ)に由来するものとみなします。
少なくとも週1~2回のセッションが3年間必要とされます。